2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

« 月刊世界の鉄道コレクション? | トップページ | 食玩「世界SL紀行」 »

2014年5月11日 (日)

ハンダゴテの鏝先を叩いて硬くすると禿びにくい? (追記「銅くわれ」、追記まとめ)

昔から、ハンダゴテの鏝先を叩いて硬くすると、禿びにくくなる(腐食しにくくなる)、ということが言われていました。

金属の加工硬化を利用するわけですね。TMSにそういう話が紹介されていたこともあって、わたしもコーティングされた電子工作用の鏝先を使用するようになる前は、鏝先が禿びるたびにヤスリをかけ、叩いていたものでした。

しかし、自分の感覚では、そのまま柔らかいままでつかっているときより叩いて硬くしたときのほうが、鏝先の荒れがはげしく、何度もヤスリをかけなければならないし、禿びるのも速いように感じていたのですが……

加工硬化すると、たしかに物理的強度は上がりますが、腐食に対してはどうなんでしょうか?

コンさんのブログでこの話題が出ていたので、気になってちょっと検索してみたら、株式会社 日本油剤研究所のウェブサイト中に「金属の腐食のメカニズムについて」という記事が見つかりました。

この記事中に、

(以下引用)
1.腐食の原因
腐食は、金属が環境(気体・液体・固体)と触れている界面で濃淡電池が形成されて起こる. つまり、自由電子を持つ金属構造そのものが不確定要因を持っているので、一定(固定)にすることは出来ないからである. その不確定の強弱は、金属自身が持つ電子授受の強度(標準電極電位)で決定される.

2.金属の内部に起因するもの
1. の金属自身が持つ自由電子の存在によって引き起こされる腐食以外に、金属内部の問題がある. 金属の内部は①転位(らせん・刃状) ②転位源 ③空孔 ④ステップ(段差) ⑤不純物 ⑥ピット ⑦キンク ⑧格子欠陥などの不安定要素の存在を発端として起こることが知られおり、例えば加工による粗大すべりでの結晶露出や加工硬化による結晶粒度の変化により、表面活性が高まることから、この手の腐食は金属の加工による塑性変形履歴と大きく関係し、1.を加速することになる.
(引用終わり)

とあります。

つまり、加工硬化は、却って腐食を加速する事になるのですね。いままで伝え聞いていた事とはまったく逆で、自分が感じていた感覚が正しかったのを知って、なんとなく安心したというか、なんというか、複雑な気分になりました。

まあ、今では自分は真鍮加工のハンダ付けは基本的にバーナーで、ハンダゴテは30wのコーティングされた鉛筆型鏝先のもので電子工作、電気工作が主ですから、今となってはもう、あまり気にする事も無いと言えば無いのですが、ハンダゴテでなければできないような工作もありますし、これから自分で加工した鏝先を使うようなときには、加工硬化はしないで使おうと思います。

 
2014.5.12 追記

追記参考情報として、いただいたコメントへのリプライを追記として記載します。

鍛造について
鍛造は通常は熱間鍛造ですから加工硬化を伴いません。加工硬化は内部応力を発生させひずみをもたらすので、これを避ける事が必須となります。故に熱間鍛造は、鍛造する金属の再結晶温度以上で行われます。(参考;再結晶温度は純鉄は630℃、鋼材900℃。鋼材の熱間鍛造の場合は一般には1100~1250℃で行われる。銅の再結晶温度は220℃)
冷間鍛造という技術もありますが、この場合はいかに加工硬化を防ぐかがその技術の最大の留意点となっています。
つまり、半田ごての温度では、再結晶温度というには微妙なところで、加工硬化の影響は避けられないでしょう。

腐食について
引用した記述から、加工硬化は、所謂「ハンダ喰われ(銅くわれ)」(広義の腐食)にも影響するだろうと思います。
細いスピーカーコイルのような銅線をハンダ付けしようとするとハンダに喰われてなくなってしまうので、その対策として銅入りハンダというものも普通に販売されています。
加工硬化しない銅でもこれですから、加工硬化した鏝先の喰われは相当なものではないでしょうか?実際自分がかつて加工硬化した鏝先が不規則にハンダに喰われた経験からの感想です。

 
2014.5.15 追記その2

さらに調べると、「銅くわれ」のメカニズムがわかってきたので、まとめておきます。

銅くわれは「溶解」という現象で、金属が融点を超え、金属が液体に変わる「溶融」とは違い、「その金属の融点に達しない温度の液体が触れてもその液体に溶けてしまう」という現象です。つまり、ハンダごてに溶けたハンダが付着しすると容易に溶けるという現象が起るわけです。常温では溶けない角砂糖が冷水に溶けるのと同じ考え方ですね。

Sn100%の液体(つまり加熱して溶けた純粋なSnです)には、250℃だと重量%で2.3%までCuは溶け込み、400℃になると12%も溶け込むそうです。ただしPbには殆ど溶ける事はないそうですので、問題はSnのほうで、鉛フリーハンダなどで影響が大きいそうです。

通常ハンダ付けを行う温度は320℃-360℃程度だそうなので、これは銅の再結晶温度を超えていますから、加工硬化はリセットされます。つまり叩いて硬くする意味は無いという事になりますので、問題は銅の「溶解」現象だけになります。

当然の事ながら、溶媒であるハンダの量が多ければ多いほど溶解する銅の量も多くなるので、鏝先にハンダをたくさんのせればのせるほど、「銅食われ」は激しくなります。また、鏝先を叩く事に寄って、細かな亀裂やでこぼこなども出来る場合もあるでしょうから、ハンダとの接触面が大きくなり、溶解が促進される事も考えられます。

たしかにフラックスに寄る腐食も大きな要因でしょうが、鏝先がちびるのは、この「銅くわれ」に寄る影響が大きいのではないかと思われます。

参考;GWES 一般社団法人 日本溶接協会 Q&Aフォーラム はんだ付(鉛フリー/フラックス/マイクロソルダリング)フォーラム : 銅くわれのメカニズム
 
 
2014.5.15 追記その3

もう少し、ネットを検索して調べてみました。

前出のGWES 一般社団法人 日本溶接協会 Q&Aフォーラム はんだ付(鉛フリー/フラックス/マイクロソルダリング)フォーラム : 銅くわれのメカニズムには、「溶解とは、金属で言うと「その金属の融点に達しない温度の液体が触れてもその液体に溶けてしまう」現象」とあります。ここでいう「液体」は金属が融点に達して液体になったものを言います。つまり、冷えて固化したハンダに銅が溶解(銅くわれ)することはないわけですね。

主な要因ではないかと指摘のあった、フラックスに寄る腐食は、水に溶けた電解質によって引き起こされるものですし、かつて鏝先をフラックスにどぼづけして酸化皮膜を取り除いていた私の経験として、鏝先のハンダメッキされた部分よりも銅がむき出しの部分が大きく腐食して痩せて鏝先がキノコ状になった例がある(ハンダに覆われた部分は直接フラックスに触れていないので銅は腐食されない)ことからも、ほぼ常にハンダで覆われた鏝先部分がけっこうな勢いで不規則に浸食されてちびるのは、やはり銅食われによるものが大きいのではないかと思います。

なお、「ハンダ付けセミナー」, 株式会社ノセ精機, P40,41には、「鉛フリーハンダの銅食われは通常のハンダの3倍のスピード。」とあり、通常のハンダでもそれなりの銅食われは起きるという前提のようです。

また、「トランジスタ技術SPECIAL for フレッシャーズNo.100」 ,CQ出版社, P26 には、「● 銅や銀を混ぜて線材や銅パターンへの侵食を防ぐはんだ付けの際,銅線や銅箔ははんだ中のSnの働きによって,(図4)のような銅食われと呼ばれる現象(銅電極の腐食)が発生します.

Photo

銅のこて先がはんだに激しく侵食されるのと同じです.太い銅電線なら多少の侵食も無視できますが,φ0.1 mm以下の極細線は断線しやすくなります.銅が1~2%入った銅入りはんだを使うと,銅食われの現象が軽減されます.その他,銀を1~2%含む銀入りはんだもあります.銀入りはんだは,銀の印刷基板や銀電極の部品をはんだ付けする際に使うのが本来の目的です.普通のはんだでは,合金化反応の際,銀の成分がはんだに移行し,同様に銀食われと呼ばれる現象(銀電極の腐食)が発生してしまいます.」とありました。
ここでは通常のハンダを前提として話をしていますが、「銅のこて先がはんだに激しく侵食される」という表現を使っています。銀食われも説明されていますね。

2014.5.18 追記その4 まとめ

いろいろ調べているうちに、参考になるコメントもいただいて、ハンダ鏝先の腐食について、なかなか興味深い知識が得られたのは、収穫だったかなと思います。

ちょっとまとめると、

1。加工硬化は銅の場合220度Cで再結晶温度に達するので、半田ごての加熱により解除される。つまり、叩いて硬くすることに意味は無い。
2。加工硬化すると、却って腐食は進みやすくなる。
3。昔の粗悪な鋳物の鏝先では、細かな鬆があるのでここから腐食しやすく、これを防ぐため叩いて締めることが有効だった。
4。ハンダの錫成分による溶解(銅食われ)も鏝先の浸食の原因のひとつ?(ウェブ上の情報をもとに、サイトを解説している組織機関(本文中に引用元情報として明記)へ問い合わせ、および原書籍等を参照して、情報の信憑性?は一応ですが確認した範囲での見解です。dda40xさんから、鉛入りのハンダではアマルガメーション(溶解?)が進まないというコメントもいただいていますが、その辺については他情報源からの情報がみつからず、自分にはわかりません)
5。銅がむき出しの部分については、使用後にフラックスが残存している事により、腐食が進むのも、鏝先が浸食される原因のひとつ?

ということで、鏝先の腐食、浸食の正確な原因究明はともかくとして、鏝先を叩いて硬くする事により、禿びるのをふせげる、というのは、あまり根拠がないのでは、という結果になりました。

本文の最初のほうにも書いたとおり、個人的には、いまでは銅むき出しの鏝先をつかうこともないので、もう、あまり気にする事なんて無いのですが、調べてみると、いろんな知識が得られてとってもおもしろかったので、ちょっと満足しています。

« 月刊世界の鉄道コレクション? | トップページ | 食玩「世界SL紀行」 »

コメント

ご検討ありがとうございました。確かに叩くだけなら微小なクラックや粗製変形に伴う金属の劣化が惹起されますので腐食には弱くなると思います。しかし、刀剣を鍛造する場合もそうですが、鏝の整形は「加熱して叩く」ということですので、熱処理の要素が加わると思います。現実にガラス用のバーナーで赤らめてから叩くと驚く程固くなりました。ヤスリをかければわかります。ハンダ鏝の場合常に加熱されますので、焼き鈍しといいますかアニーリングの要素があるのではないでしょうか?つる首型コテ先も、加熱鍛造した形跡があり、ある方の書き込みでは、安達製作所のカタログに、コテ先をヒーターに取り付けて加熱した状態で叩くことで作ると書かれてあるそうです。加熱することで、条件が違ってくる可能性もありますので、自作のコテ先をしばらく使ってみます。もしかして、市販のつる首型コテ先は通常のナイフ型のコテ先を鍛造してあのように加工しているのかも知れません。

 加工硬化すると腐食が進み易くなるのは事実です。釘の油気を取り、中央部をハンマで一撃して、海水程度の塩水に半分浸るようにして一晩放置します。すると釘の頭と先と叩いた中央部が錆びています。
 しかし、この局部電池の効果は電解液中に浸けた時であり、ハンダゴテのように熱いものには適用できないと思います。むしろ、冷えた時に多少残存している塩化亜鉛が潮解性ですから、それが電解液になっている可能性があります。私は使用済みのコテは必ず水洗いします。明らかに長持ちしています。
 プロはハンダに浸っている時間が長いので、相対的に錆びにくいように感じます。また、炭で加熱すると、炭素や、生じる一酸化炭素で常に還元されていました。

コンさん、dda40xさん、コメントありがとうございました。

鍛造について
鍛造は通常は熱間鍛造ですから加工硬化を伴いません。加工硬化は内部応力を発生させひずみをもたらすので、これを避ける事が必須となります。故に熱間鍛造は、鍛造する金属の再結晶温度以上で行われます。(参考;再結晶温度は純鉄は630℃、鋼材900℃。鋼材の熱間鍛造の場合は一般には1100~1250℃で行われる。銅の再結晶温度は220℃)
冷間鍛造という技術もありますが、この場合はいかに加工硬化を防ぐかがその技術の最大の留意点となっています。
つまり、半田ごての温度では、再結晶温度というには微妙なところで、加工硬化の影響は避けられないでしょう。

腐食について
引用した記述から、加工硬化は、所謂「ハンダ喰われ」(広義の腐食)にも影響するだろうと思います。
細いスピーカーコイルのような銅線をハンダ付けしようとするとハンダに喰われてなくなってしまうので、その対策として銅入りハンダというものも普通に販売されています。
加工硬化しない銅でもこれですから、加工硬化した鏝先の喰われは相当なものではないでしょうか?実際自分がかつて加工硬化した鏝先が不規則にハンダに喰われた経験からの感想です。

ハンダ喰われ(スズによるアマルガメイション)のことは承知していますが、平衡濃度までにかかる時間(逆数を取れば反応速度に比例)はかなり掛かるはずです。またコテ先に付いているハンダのそのまたスズの量はとても小さく、銅の量を減らすには、アマチュアの使用量では、ちと無理がありそうです。
また、長いハンダの歴史の中で鉛ハンダに銅が喰われて困りましたというのは、お目にかかったことがありません。最近、無鉛ハンダが出初めて聞く話です。
30年ほど前、銀めっきした銅線(無線マニアは良く知っています)をハンダ付けすると、銀がハンダに吸収されて割れやすいので、銀を2%入れたハンダを用意して、友人にも分けました。銀のことは有名ですが、銅が喰われる話はまずありません。
おそらく鉛の共存が妨害要因を持っているはずです。実家にあった銅の風呂釜は30年ほど無事故でその使命を終えました。ハンダ付けをした職人は友人のお爺さんで、横でその作業を見ていたことを思い出しました。
フラックスを洗わないことによる酸化の量が、その他の要因をはるかに凌ぐというのが
私の推論です。

dda40x様

コメントありがとうございます。

さて、どうなのでしょうか?

鉛ハンダによる銅溶解について、ネットを検索しても明確な記述はありませんが、普通の共晶ハンダを前提として銅食われの現象を解説した記事がありましたので、その事も含め、本文に追記しておきました。

風呂釜の場合はハンダは液状になって銅に接触しているわけではないので、銅食われは起らなかったのではないかと思います。


アマルガメイションという現象は、少数の金属元素によってのみ起こります。文字通りの水銀をはじめとして、スズ、インジウムなどが知られています。
ご紹介の記事を読みましたが、決して専門家の文章ではなく、突っ込みどころが一杯あります。アマルガメイションは液体の金属だけで起こることではなく、固体の接触でも起こります。圧着端子のスズめっきが良い例です。
ですから、銅の風呂釜のハンダが異常をきたさなかったというのは、鉛ハンダが銅をそれほど喰わなかったことにほかなりません。しかし、銀は鉛ハンダとよく反応することが、昔から知られています。

圧着端子でもアマルガメーションを利用しているというのは知りませんでした。クレーン荷掛け作業用スリングロープアイのクランプ管ロック(圧着)加工と同等と考えていました。
さて、ここからは素人の推論ですが、溶媒側となる金属が液相か固相かでは、かなり様相が違ってくるのではないかと思います。
氷(すこし違いますがジェリーでも)の上に角砂糖を置いた場合と皿に張った水に角砂糖を置いたときの違いです。
金属の場合でも片方が液相の場合は境界面で出来たアマルガムが液相の金属中に拡散して常に溶解金属成分濃度の低い新たな溶媒金属が供給され、連続してアマルガメーションが起る結果、浸食が進むのではないかと思いますが、どうでしょう?

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 月刊世界の鉄道コレクション? | トップページ | 食玩「世界SL紀行」 »